惑星おいしそう

惑星科学のお話,たまに歴史のお話を徒然なるままに

系外惑星を探せ! その1

夏休みがあと一週間ちょっとしかないことに気づき,
読みたい本が全て消化できずに困っています。
基本的に歴史ものか恋愛ものしか読みませぬ。

 

さて,前回はいろんな系外惑星を紹介しました。
その中で,系外惑星の検出方法がいろいろあるとちょこっと書きました。

今回は「系外惑星を一体どうやって見つけるのか」
について紹介したいと思います。
長くなってしまったので,このテーマは2つに分けて書こうと思います。

その前に,系外惑星検出の歴史について少し書きます。


前回の記事で書いたように,
系外惑星が初めて検出されたのは,1995年のことで
なんと私が生まれた年です。
(歳がバレる)

1995年以前から,系外惑星を検出する方法は考えられていました。
技術的にはもっと前に検出が可能な状態だったのですが,
実際に検出されたのはわずか21年前のことです。

スイスのジュネーブ大学の教授,ミシェル・マイヨール博士と大学院生が
後に紹介する「ドップラーシフト法」を使って初の検出に成功しました。

実はマイヨール博士,もともと惑星の専門家ではなかったんです。
マイヨール博士の専門は連星(複数の恒星が一緒にぐるぐるしてる)でした。
どうしてそんな人が系外惑星を見つけられたのか?

いや,畑違いだったからこそ,見つけられたんです。

マイヨール博士らが見つけた系外惑星ペガスス座51番星b」は
中心星(太陽にあたる星)から0.052天文単位(1天文単位=地球と太陽の距離)のところをわずか4.2日で1周しているという,
太陽系の惑星では考えられないものだったからです。
ちなみに,太陽系で1番公転周期(太陽の周りを一周する時間)の短い水星は太陽から0.38天文単位,公転周期は約88日です。

「太陽系の惑星みたいな惑星があるはずだ」
という常識にとらわれていたがために,技術的には可能でデータも手元にあったのに
1995年まで見つけることができなかったんです。

そこに,連星を研究していたマイヨール博士が参入してきて惑星の常識を打ち破って観測した結果,見つけちゃったというわけです。
連星はわずか数日周期でぐるぐる回っているものもあるので,
その流れで観測したら見つけちゃった,という感じだったんでしょうか。
※連星については前回記事参照

ちなみに,マイヨール博士はこの功績により
ノーベル賞への登竜門と言われることもある有名な京都賞を2015年に受賞されています。

ちなみにちなみに,1995年には現在の惑星のできかた理論の創始者の1人と言える京都大学の故・林忠四郎博士が京都賞を受賞されています。


私は科学史も好きなので
こういうネタも結構ボリューミーに書きたがります笑

さて,いよいよ系外惑星の検出方法について紹介します。
方法はたくさんあるのですが,今回は5つ紹介します。

1.直接撮像法
2.トランジット法
3.ドップラーシフト法
4.重力マイクロレンズ法
5.パルサータイミング法

青字は直接法,
赤字は間接法(直接と間接の違いは後ほど)
太字は主流なもの,を表しています。

前半のマイヨール博士のお話が思ったよりボリューミーだったので笑,
この記事では1.直接撮像法と,2.トランジット法を紹介します。
3~5は少し待っててね。


1.直接撮像法

文字通り,直接望遠鏡で惑星の姿をとらえます。

系外惑星それ自身は恒星のように自ら光っていないし,
恒星よりもはるかに小さいので,直接見るのは実は非常に大変なのです。
なので直接見える系外惑星はほんのちょっとしかありません。

実際はどんな惑星が見やすいかと言うと,
・地球に近い
・比較的大きい
・中心星からある程度離れている
これらを満たしている必要があります。

まず,地球から遠すぎたり,小さすぎたりすると見つけにくいのは直感的にもわかりますね。
次に,中心星からある程度離れていること。
中心星に近いと,中心星自体の明るさに紛れて惑星が見えなくなってしまいます。
逆に中心星から遠すぎたら暗くなって見えなくしまうけど笑。

そういえば,今まで僕が「発見」という言葉の代わりに「検出」と言っていたのに違和感を覚えた人もいるかもしれません。
系外惑星の姿を直接「発見」するのは難しいので,
次からお話するように,系外惑星があるという状況証拠から「間接的に」見つけるのが主な方法になります。
なのでワザと「検出」と言っていたわけですね。


2.トランジット法

トランジット法は最も検出個数が多い方法です。
私も前に授業でやったことがあります。

ここで,おもしろいグラフがあるのでご紹介。

f:id:torakokumakoushiko:20160909105625p:plainNASA Exoplanet Archive より)

系外惑星の年別の確認数と検出方法をまとめたものです。
トランジット法がめちゃくちゃ活躍してるのがわかりますね。

2014年からずば抜けて検出個数が多いのは,
NASAケプラー宇宙望遠鏡という,トランジット観測専用の宇宙望遠鏡を打ち上げてバンバン検出したからです。
ちなみに,2015年が少ないのは,故障して姿勢が上手く保てなくなってしまったので,今までのように観測ができなくなってしまったから,
さらに,2016年にめっちゃいっぱい見つかっているのは,膨大なデータの新しい解析方法ができて,故障する前に取ったデータからたくさん検出できたからです。


トランジット法では,惑星が中心星の前を横切るときに中心星の光を遮って少し暗くなることを利用します。

惑星が通り過ぎるときの中心星の明るさをグラフにするとこんな感じ。

f:id:torakokumakoushiko:20160913112745j:plain

恒星は球なので真ん中が一番分厚く明るいため,
惑星がど真ん中を通るときに一番暗くなって
通過し終わると元の明るさに戻ります。
中心星の明るさをモニターして,こんなカーブが得られたら系外惑星検出ってわけ。

さらに,トランジット法だと嬉しいことがわかります。
惑星と中心星の大きさの比がわかるのです。

中心星の明るさは,惑星が大きければ大きいほど,大きく減ります。
小さいとあんまり暗くなりません。
つまり,惑星は大円(*)の面積だけ中心星を隠すことになるので,
普通の状態と比べて中心星が何割暗くなるのかがわかれば,惑星と中心星の大きさの比がわかります。
*大円・・・北極と南極を通るように球をズバッと切ったときの断面の円

恒星の大きさ(半径)は,
恒星までの距離,恒星が放つエネルギー量,恒星の温度から計算することができます。


さて,今回は系外惑星をどうやって見つけるか
前編をお送りしました。
次回は残りの3つの検出方法の紹介です。


それでは次回もお楽しみに。
ごきげんよう。