惑星おいしそう

惑星科学のお話,たまに歴史のお話を徒然なるままに

系外惑星の反乱

週休4日のはずですが,タスクが大量に降り積もっています。
これも頑張って書いています...


前回までは,「太陽系が」どうやってできたのかということについてでした。

そこへ喧嘩を売りに来たのが,前にお話しした(コチラ)太陽系の惑星とは違う特徴を持つ「系外惑星」。

系外惑星「オラオラ!太陽系のあんな平凡な惑星だけじゃなくてよぉ~!
     俺たちホットジュピターとか,エキセントリックプラネットとか,
     系外惑星まで含めて考えてんのかぁ~おめーら!!!」

研究者「なんだアイツら!あんな変な惑星知らない!
    でも存在しちゃってるんだからアイツらもどうにかしなきゃ。
    えっ,ホットジュピターってどうやってできたの?!」

系外惑星「ざまあみろ!井の中の蛙大海を知らずとはこのこと!
     おまえらの惑星形成論なんて所詮この程度なんだよ!」

研究者「ふえええええええ~~!!」

※私は中二病とか,そういうのではありません。


そうなんですね。
今までの話だと,実は系外惑星まで対応しきれてないんですね。
例えば,木星などの巨大ガス惑星は中心星から遠い所にできると説明しました。
でも現実には「Hot Jupiter」と言う,中心星にごく近い所にある巨大ガス惑星も発見されています。

どうすれば,多様な特徴を持つ系外惑星にも対応できるのか。
これまで全然考えてこなかった何かを考える必要があります。


それが「軌道移動」という,惑星が中心星に近づいたり遠ざかったりする動きです。
惑星は今いる位置で生まれたと無意識に考えてしまってましたが,その前提を疑おうということです。
普段の感覚だと,地球は太陽の周りを同じ軌道でぐるぐるしていて太陽に近づいたり遠ざかったりなんてほとんどしてないから軌道移動なんて考えもしないですよね。

系外惑星のみならず,太陽系の惑星についても過去に軌道移動をしたのではないかという研究がたくさんなされています。


では,例として「Hot Jupiter」を作る方法について考えてみましょう。
Hot Jupiterとは,最初の記事で書いたように中心星に近い巨大ガス惑星のことです。
一方,前回の記事では巨大ガス惑星は中心星から離れたところにできるんだ,と言いました。矛盾していますねΣ(゚д゚|||)

とすると,Hot Jupiterを作るには2つの可能性が考えられます。
1.巨大ガス惑星は中心星から遠い所でできて,後に何かの力がはたらいて中心星に近づいた(木星は何らかの理由でその場にとどまった)
2.巨大ガス惑星は中心星から遠いところでできる,というのがそもそもウソで,本当は中心星近くでできる

最近の研究では,このどちらも物理的にはあり得ることがわかってきました。


1.が正しいとすると,巨大ガス惑星を中心星に近づけるメカニズムが必要です。

ここで1つ,言葉の紹介をします。
惑星が中心星に近づく,あるいは近づきすぎて中心星に飲み込まれてしまうことを「落下」と言います。
地球上でも「ものが地球の中心に向かっていく」ことを落下と言いますね。
同じように,惑星が中心星に向かっていくことをよく「落下」と言います。

では,巨大ガス惑星が落下する2つのメカニズムの説明です。

1-1:
シミレーションをすると,「大きな惑星が3つ以上あるとHot Jupiterができ得る」ことがわかりました。
大きな(重い)惑星が3つ以上あると,お互いに軌道を乱し合ってそのうちの必ず1つはいずれ外に吹っ飛ばされて,代わりに残った惑星が中心星の近くに落ち着きます。
これを「Slingshot(スリングショット) model」と言います。
(授業で頑張ってプログラム組んで再現しようとしましたが詰んでいます)

f:id:torakokumakoushiko:20161114113018p:plain

このとき落下した惑星は極端な楕円軌道を取ることもあり,エキセントリック・プラネットになることもあります。


2-2:
巨大ガス惑星が円盤のガスと一緒に落下し,ちょうどいいところで止まったとする考え方もあります。f:id:torakokumakoushiko:20161114120220p:plain

成長段階の巨大ガス惑星は,通り道のガスを重力で引き寄せて食べています。
そうすると図のようにドーナツ状に隙間ができますが,円盤全体は中心星に引っ張られてゆっくりと落下しています。
すると,この隙間も内側へと移動し,隙間の中にある巨大ガス惑星も一緒に移動します。
こうやってどんどん落下するというわけです。

このままだと中心星に近づきすぎて飲み込まれてしまいますが,一方で円盤のガスは宇宙空間に徐々に拡散していくので,時間が経つとどんどん薄くなっていきます。
巨大ガス惑星が中心星に飲み込まれるより前に円盤が薄くなって落下が止まれば,Hot Jupiterの完成というわけです。


2.巨大ガス惑星は本当は中心星近くでできるのではないか

前回の記事が全くの嘘で,巨大ガス惑星が中心星近くでできるとしましょう。
そうすると,木星は太陽からわりかし遠い所にあるので木星を太陽から遠ざける何かが必要です。

そこでいろいろシミュレーションしてできたのが「Grand Tack(グラン・タック) model」です。f:id:torakokumakoushiko:20161116164514p:plain

(Walsh et al. 2011) (動画はコチラから。PC推奨。最下部のイメージをクリックして保存。)

動画をスクショしたやつです。内側から順に木星土星天王星海王星です。
左から右に時間が進んでいきますが,木星に注目すると,一旦太陽に近づいてから外側に移動しています(一番右の点線が最初に木星があったところ)。


このように物理的にはあり得ることがわかりましたが,シミュレーションの最初の条件を変えれば結果はいくらでも変わり得るので,こうやって都合よくいくかどうかは疑問です。


とこのように,最近では「軌道移動」まで考慮して惑星形成論が拡張されています。
まだまだ理論が完成するのは先の話ですが,こうやって現在進行形で科学が進歩しているのを目の当たりにするのは面白いものです。
私が惑星科学に興味を抱いた理由の1つでもあります。

なんだかこう考えると,地球の将来もどうなるかわかんなくなってきますね笑


ということで,「惑星形成論」については今回でおしまい。
次回からは,ためになるかわかんないお月さまの話とか,ためになるかわかんない地球の歴史の話とか,ためになるかわかんない温泉の話とかを予定しています!

乞うご期待(/・ω・)/